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〒211-0045
神奈川県川崎市中原区上新城2-11-25 セシーズイシイ5 3階
消化器内科
消化器内科とは
食物を摂取して排出するまで、いわゆる口から肛門までの間というのは、一本の長い管でつながっており、これを消化管と言います。この管の中には食道、胃、小腸、大腸といった器官があるわけですが、これらに何らかの症状や病気がみられること、または消化管での消化や吸収を助ける膵臓、肝臓、胆嚢に異常があるという場合に対応する診療科が消化器内科です。
消化器症状を訴える患者様の多くは、腹痛、吐き気・嘔吐、下痢、便秘といったもので、その場合は、胃腸炎(感染性 等)など一過性の病気のケースが多いです。ただ診察の際は、あらゆる可能性を考慮し、必要であれば内視鏡(胃カメラ、大腸カメラ)をはじめとする検査機器(超音波検査や腹部レントゲン検査など)を使用して、詳細を調べ診断をつけていきます。このほか、健康診断などで行われる便潜血検査で陽性反応を受けたという場合もご受診ください。
胃カメラはこちら 大腸カメラはこちら消化器内科で患者様が訴える主な症状(例)
- 腹痛
- 胃痛
- 胃もたれ
- 吐き気・嘔吐
- 胸やけ
- 下痢
- 便秘
- 急激な体重の減少
- 嚥下困難(水や食物を上手く飲み込めない)
- 血便(便に血が混じっている)
- 黒色便
- 吐血
- 食欲がない
- 黄疸 など
消化器内科で取り扱う代表的な疾患
- 逆流性食道炎
- 胃食道逆流症
- 食道カンジダ症
- 食道裂肛ヘルニア
- 食道乳頭種
- 胃腸炎
- 急性胃炎
- 慢性胃炎
- 胃潰瘍
- 胃・十二指腸潰瘍
- 胃ポリープ
- ピロリ菌感染症
- 機能性胃腸症
- 感染性胃腸炎
- 急性腸炎(虫垂炎、憩室炎、虚血性腸炎など)
- 便秘症
- 下痢症
- 大腸ポリープ
- 過敏性腸症候群(IBS)
- 炎症性腸疾患
- クローン病
- 潰瘍性大腸炎
- 脂肪肝
- 肝血管
- 肝嚢胞
- 急性肝炎
- 慢性肝炎
- 肝機能障害
- B型肝炎
- C型肝炎
- 非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)
- 肝硬変
- 胆石
- 胆嚢炎
- 胆嚢ポリープ
- 急性膵炎
- 慢性膵炎
- 膵管内乳頭粘液性腫瘍(IPMN)
- 食道がん
- 胃がん
- 大腸がん
- 肝がん
- 胆管がん
- 膵がん など
消化器内科でよくみられる疾患
逆流性食道炎
逆流性食道炎とは
胃内の胃酸が食道に逆流し、それによって食道に炎症が起きている状態が逆流性食道炎です。食物を消化する胃液は、酸性度の強い塩酸や酵素などが含まれているのですが、胃内や十二指腸はこのような酸性の液体にも耐えられる構造になっています。しかし、それ以外の臓器に胃液が付着すれば、それに対する耐性はありません。そもそも食道と胃の間には下部食道括約筋という筋肉があるのですが、この働きによって胃からの逆流を防止しています。ただ何らかの原因で同筋肉が緩むなどの機能低下が起きると食道にも胃液が漏れる、あるいは逆流するなどして、食道に炎症が起き、様々な症状がみられるようになるのです。
逆流性食道炎を起こす原因としては、高脂肪食を食べ過ぎる、喫煙、アルコールやカフェイン(コーヒー、紅茶 など)の過剰摂取、ストレス、ベルトなどで腹部を強く締める、食道裂肛ヘルニアなどが挙げられます。
また食道に炎症(逆流性食道炎)が起きることで、胃のむかつき、吐き気、胸やけ、胸痛、呑酸、慢性的な咳などの症状がみられるようになります。病状を悪化させると、バレット食道(食道の粘膜が胃の粘膜に変化する)、食道の狭窄、吐血などの症状がみられるほか、食道がんを発症させるリスクも高まりますので、上記の症状などに心当たりがあれば、お早めにご受診ください。
検査について
診断をつけるための検査としては、胃カメラ(上部消化管内視鏡)をはじめ、胃酸分布測定、バリウムを使用した食道中心のX線撮影などを行っていきます。
治療について
主に薬物療法による治療となります。使用されるのは胃酸の分泌を抑制する薬で、具体的には、H2ブロッカー、プロトンポンプ阻害薬、カリウムイオン競合型アシッドブロッカーなどです。また日頃の生活習慣を見直すことも大切で、高脂肪食は控える、食べたらすぐに横にならない、禁煙をする、お酒やカフェインを摂り過ぎない、減量するといったことも重要です。
胃食道逆流症
胃食道逆流症とは
主に胃液を含んだ内容物が食道の方に逆流してしまう現象のことを言います。通常であれば、胃の中の消化物や胃液は、胃と食道の間にある下部食道括約筋と呼ばれる筋肉が働くことで食道への逆流が防がれていますが、この筋肉の機能低下をはじめ、胃内で胃酸が過剰に分泌する、食道の知覚過敏などがきっかけとなって発症するようになります。上記のような状態になる原因はひとつではなく、喫煙をはじめ、コーヒーやアルコール、肥満や食生活、ストレスなどが挙げられます。
なお胃食道逆流症は、食道付近で起こるとされる定型症状と食道以外の臓器で起きる非定型症状に分類されます。定型症状(食道内で起きる)では、胸やけ、呑酸(酸っぱいものが込み上げる)、ゲップなどが見受けられます。非定型症状(食道外で起きる)では、胸痛、声のかすれ、虫歯、中耳炎、のど付近の違和感、喘息のようなしつこい咳などが起きるようになります。
検査について
患者様が定型症状を訴えている場合は、検査をしなくても診断をつけることもあります。ただ医師が診断を確定させるために検査が必要と判断すれば、胃カメラ(上部消化管内視鏡)、胃酸分布測定(食道内の酸性度を24時間測定)、バリウムを用いた胃内のX線撮影などを行います。
治療について
治療の基本は、胃酸の分泌を減らすための薬物療法(制酸薬など)となります。また生活習慣の改善として、高脂肪食の食事やアルコール、カフェイン(コーヒーや紅茶 等)の過剰摂取を控える、禁煙するなど、減量するなど胃酸が逆流しやすくなるリスクをできるだけ避けることも大切です。
胃潰瘍
胃潰瘍とは
胃の内壁が胃酸によるダメージを受けるなどして炎症を起こし、その症状がさらに進行して患部がただれ、そして一部がえぐれてしまっている状態になると胃潰瘍と診断されます。
そもそも胃粘膜は強い酸性にも耐えられる性質なのですが、何らかの原因によって胃液に含まれる消化酵素と胃粘膜を保護する粘液のバランスが乱れてしまうと胃粘膜が損傷を起こすようになります。この状態を放置し続けると胃潰瘍まで発症することがあります。
なお胃粘膜が損傷する原因(胃内のバランスの乱れ)については、ピロリ菌(ヘリコバクター・ピロリ)の感染、NSAIDs(痛み止め)を必要以上に使用している、ストレス、嗜好品(たばこ、アルコール 等)の過剰摂取などによって引き起こされるのではないかと言われています。
主な症状は、みぞおちでの鈍い痛み、胸やけ、吐き気、吐血、呑酸、潰瘍からの出血による黒色便(タール便)などです。さらに病状が悪化すると胃に穴が開くとされる穿孔が起きます(手術が必要になることもあります)。
検査について
胃潰瘍が疑われる場合、胃の内部を観察する内視鏡検査(胃カメラ)、患者様がバリウムを飲んだ状態でX線撮影をし、潰瘍の位置を確認するバリウム造影検査を行います。このほか胃潰瘍の原因の多くはピロリ菌の感染によるものなので、胃カメラの際に胃粘膜の一部を採取することで同菌による感染の有無を調べる検査をすることもあります。
治療について
治療に関してですが、一般的には薬物療法となります。具体的には、胃酸を抑制する薬(プロトンポンプ阻害薬やカリウムイオン競合型アシッドブロッカー など)を使用していきます。また検査の結果、ピロリ菌に感染していることが判明した患者様につきましては除菌治療(詳細は同ホームページ:ピロリ菌検査の項目を参照ください)を行っていきます。
なお潰瘍から出血がみられていれば、内視鏡で止血をしていきます。このほか、大量の出血がみられる、胃穿孔があるといった場合は、手術療法(外科的治療)が検討されます。
十二指腸潰瘍
十二指腸潰瘍とは
十二指腸は胃と小腸の間にあります。胃から運ばれてきた食物と胆汁や膵液(消化酵素)を混ぜ合わせることで消化を促進させ、さらに腸へ送っていくという働きをします。十二指腸も胃と同じく、粘膜(内壁)は強い酸性にも耐えうる構造になっています。ただ十二指腸内のバランス(粘液と酸・消化酵素)が乱れることで、胃酸などによって粘膜は傷つくようになります。このダメージによって、炎症やただれが起き、さらに悪化すると潰瘍を引き起こすようになります。これを十二指腸潰瘍と言います。同疾患は、20~40代の男性患者様が多いのも特徴です。
発症の原因(バランスが乱れる要因)としては、ピロリ菌(ヘリコバクター・ピロリ)の感染、過度なNSAIDs(痛み止め)の使用、ストレス、喫煙や多量の飲酒、カフェイン(コーヒー、紅茶 など)の過剰摂取などが挙げられます。
よくみられる症状は、みぞおちが痛む、嘔吐・吐き気、食欲不振、吐血などで、潰瘍による出血があれば、黒色便がみられることもあります。
検査について
十二指腸潰瘍が疑われると診断をつけるための検査として、内視鏡検査(胃カメラ)やバリウム造影検査が行われます。またピロリ菌に感染している可能性もあるので、感染の有無を確かめる検査(胃カメラで一部組織を採取しての生検 など)もしていきます。
治療について
胃潰瘍の治療と同じく、薬物療法が中心となります。主にプロトンポンプ阻害薬やカリウムイオン競合型アシッドブロッカーなど胃酸を抑える薬を使用していきます。またピロリ菌に感染していることが判明した場合は、それに対する除菌治療(薬物療法)を行っていきます。
胃腸炎
胃腸炎とは
その呼び名の通り、胃と腸に炎症が起きている状態で、胃のみであれば胃炎、腸のみであれば腸炎と診断されます。炎症が起きる原因の大半は、ウイルスや細菌といったもので、代表的なものとしては、サルモネラ菌、ノロウイルス、ロタウイルス、黄色ブドウ球菌などがあります。また寄生虫が混入している食物や毒キノコ、有害な化学物質を食べるといったことで発症することもあります。ちなみに食中毒が起きたというニュースをよく耳にするかと思いますが、この場合も胃腸炎として数えられます。
主な症状ですが、原因とされる細菌やウイルスに感染することで発症します。多くは体内でこれら病原体が1~3日程度潜伏した後、吐き気・嘔吐、下痢、腹痛などがみられるほか、発熱や易疲労感などの全身症状が現れることもあります。また下痢や嘔吐が長い期間続くと、体内の水分などが減って、脱水症状や電解質が喪失することによる症状が起きるようにもなります。
検査について
発症の原因を調べる検査には、糞便中に含まれるウイルスや細菌を調べる便検査があります。この場合、結果が判明するまでに2~10日程度かかることがあります。また胃腸炎の様子を直接観察していく内視鏡による検査(胃カメラ、大腸カメラ)は、胃腸内部の状況がモニターを通してわかりますのでかなり有効な検査方法と言えます。
治療について
この場合の治療法は症状に対する治療、すなわち薬物療法による対象療法が主となります。下痢を訴えているのであれば整腸剤、嘔吐であれば制吐薬、腹痛の場合は鎮痙剤を使用していきます。また、下痢があまりにもひどいとなれば止痢薬を用いることがあります。このほか、細菌感染による胃腸炎ということであれば抗生物質(抗菌薬)による治療を行うこともあります。
食事面では、できるだけ消化の良い食品をとるようにし、辛すぎるなど刺激が強い食べ物、脂質が多く含まれる食品、アルコール類は避けます。また激しい腹痛や血便の症状があれば、絶食をするなどして、消化管を安静にして回復を促すこともあります。
また治療中の注意点として、脱水症状にならないようにしていくのも大切です。経口摂取での水分補給に問題がなければ、水やお茶、経口補水液やスポーツドリンクなどを飲み、常に水分不足を補うようにしてください。
急性胃腸炎および感染性胃腸炎
急性胃腸炎および感染性胃腸炎とは
急性胃腸炎とは、主に胃腸の粘膜が、細菌(サルモネラ菌、病原性大腸菌、腸炎ビブリオ など)やウイルス(ノロウイルス、ロタウイルス、アデノウイルス など)、寄生虫(アメーバー 等)などの病原体に感染し、それによって炎症が引き起こされている状態です。なお病原体による感染(感染性胃腸炎)以外にもストレス、刺激の強い食品を好んで食べる、カフェイン(コーヒー など)やアルコールの過剰摂取、薬剤(ステロイド薬、NSAIDs、抗菌薬 など)、アレルギーなども発症の原因となります。
発症することで、発熱、腹痛、嘔吐・吐き気、下痢などがみられ、さらに病状が進行すると吐血や血便も現れるようになります。なお下痢や嘔吐が続くと、脱水症状が起きやすくもなります。なかでも幼児や高齢者はこのような状態にならないように気をつけてください。ちなみに乳幼児に罹患しやすいウイルス性の感染性胃腸炎でロタウイルスというのがあるのですが、同ウイルスに感染すると米を研いだ際の白っぽい水分を多く含む下痢便がみられます。
検査について
まず問診をしていきます。その後、血液検査や腹部レントゲン検査などをしていきます。患者様が希望される場合は、ウイルス検査キットを用いる検査もしていきます。胃痛や血便などの症状がある場合は、胃カメラや大腸カメラを行うこともあります。
治療について
発症の原因がウイルス性の感染性胃腸炎の場合は、ウイルスそのものに効く薬というのはありません。そのため、症状を緩和させる対症療法として、整腸剤、吐き気止め、解熱薬などを用います。下痢は腸内のウイルスを排出させるという意味合いがあるので、下痢止めは必要最低限の使用に控えます。また細菌性の感染性胃腸炎であれば、抗菌薬の点滴や内服をしていきますが、原因菌によっては、使用しないこともあります。このほか、下痢や嘔吐なので脱水症状が出やすくなっているので、こまめに水分を取り続けるようにしてください。
慢性胃炎
慢性胃炎とは
慢性胃炎は、胃粘膜に慢性的な炎症が続いている状態です。胃炎は長いと一ヵ月以上続き、これが長期間繰り返されるようになります。ただこの場合、急性胃炎が慢性化することはありません。原因としてはヘリコバクター・ピロリ(ピロリ菌)に感染している、ストレスの影響、食生活の乱れ(刺激の強いものを好んで食べる、高脂肪食の過剰摂取 など)、生活が不規則、アスピリンや非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)の長期使用などが挙げられます。
主な症状は、胃もたれや胃の不快感、食欲不振、胸やけ、吐き気、腹痛、膨満感などですが、自覚症状がないまま病状が進行することもあります。また慢性胃炎は、症状の程度によって、表層性、萎縮性、肥厚性の3つのタイプに分類されます。そのうち胃粘膜が萎縮し、胃液の分泌が不足する萎縮性胃炎がよくみられると言われています。
検査について
慢性胃炎の原因の多くはピロリ菌の感染によるものなので、感染の有無を調べるための上部消化管内視鏡検査(胃カメラ)を行います。同検査では、内視鏡で胃粘膜の一部を採取し、ピロリ菌の有無など調べていきます。
治療について
ピロリ菌の感染が原因であれば除菌治療を行います。またストレスによって引き起こされている場合は、根本の原因を解決することで症状が緩和されるようになります。上記以外の原因であれば、患者様の症状に合わせて、適切とされる内服薬(胃酸分泌抑制薬、胃粘膜保護剤 など)を処方していきます。また、胃や腸に負担をかけるとされる乱れた食生活の見直し、禁煙や禁酒・節酒も行うなどして、日常生活を改善していくことも必要です。
機能性胃腸症
機能性胃腸症とは
胃腸炎でよくみられるような症状があるものの、診断をつけるための検査(胃カメラ など)をしてもそれらしい病変が見つからない場合に考えられるのが機能性胃腸症(機能性ディスペプシア)です。原因については現時点で特定できていませんが、ストレス、胃の運動機能の低下、食生活(暴飲暴食 など)をはじめとする生活習慣の乱れなどが考えられます。
主な症状ですが、同疾患は大きく2つのタイプ(食後愁訴症候群、心窩部痛症候群)に分けられます。それぞれの特徴ですが、食後愁訴症候群は食後に腹部が張る、違和感がみられるとされるものです。この場合、少しの食事でお腹がいっぱいになるので通常の食事がとれない、食事の量に関係なく膨満感に見舞われる、胃もたれがするなどです。日本では同疾患の患者様によくみられるタイプです。一方の心窩部痛症候群は、みぞおち周辺が痛む、あるいは焼けつくなど、みぞおち中心に症状がみられるようになります。
検査について
患者様にみられている症状や訴えによって、胃カメラ(内視鏡)、腹部超音波検査、腹部X線撮影、血液検査などから、医師が必要とされる検査をしていきます。病変など器質的なものが認められない場合に機能性胃腸炎と診断されることがあります。また心理的なストレスが関係していると判断すれば、心理テストを検討していただくこともあります。
治療について
治療の基本は、薬物療法と生活習慣の改善になります。薬物療法としては、消化管(胃や腸)の運動機能を改善する薬(抗ドパミン薬 等)、胃酸の分泌を抑制する薬(H2ブロッカーやプロトンポンプ阻害薬 など)を使用していきます。
また併行して生活習慣の見直しも必要で、ストレスが原因であればストレスを溜めない、あるいは発散しやすい環境を構築する、食生活(暴飲暴食、早食い など)を改善する、禁煙、睡眠時間を十分にとるなどもしていきます。
感染性腸炎
感染性腸炎とは
腸内が、細菌、ウイルス、寄生虫などの病原体によって感染し(感染経路は接触感染、経口感染 等)、それによって炎症が起きるなどして様々な症状が起きている状態を言います。原因ウイルスとしては、ノロウイルスやロタウイルス、腸管アデノウイルスなどがあります。また細菌であれば、サルモネラ菌、カンピロバクター、腸炎ビブリオ菌、病原性大腸菌などが挙げられます。このほか寄生虫には、アメーバー、クリプトスポリジウム等が感染性腸炎を発症させることがあります。
主な症状は、下痢、腹痛、嘔吐・吐き気などで、発熱もみられます。症状が強く出ていると38℃以上の高熱、あるいは血便も現れるようになります。ウイルスが原因の腸炎では、嘔吐・吐き気の症状が強く、寄生虫による感染であれば下痢の症状が長く続きやすいと言われています。
検査について
多くの場合、便を採取することで、原因菌の有無を調べていきます。また医師が必要と判断すれば血液検査も行います。そのほか、血便や下痢が続いている場合は、内視鏡(大腸カメラ)を用いて、直腸や結腸の内壁の様子も観察していきます。
治療について
どのタイプの病原体であっても特効薬はありません。基本的には、これといった治療をしなくても治まっていきますので、腹痛、嘔吐・吐き気、下痢などの消化器症状を和らげていく対症療法をしていくことになります。ただ重篤な症状がみられる、高齢者や小児が発症しているという場合は、原因菌に対して抗菌薬を用いることもあります。
さらに治療中は消化の良い食事をしていくほか、あまりにも下痢や嘔吐の症状がひどい場合は絶食することもあります。また下痢や嘔吐などによって、体中の水分が瞬く間に排出されます。つまり脱水症状が起きやすくなるので、水やスポーツドリンク、経口補水液などで水分補給は欠かさないようにします。
虫垂炎
虫垂炎とは
右下腹部にある盲腸から突き出ている紐状の器官である虫垂に炎症が起きている状態を虫垂炎と言います。虫垂炎は盲腸と同じと思う方もいるかもしれませんが、同疾患によって原因とされる部分を切除しようと医師が開腹した際に盲腸まで炎症が広がっていることも珍しくなく、そのようなことから虫垂炎は盲腸あるいは盲腸炎と呼ばれることが多くなりました。
この場合、虫垂に細菌が感染することで炎症を起こすようになるのですが、それによって腹痛(発症初期はみぞおち周辺に痛みを感じ、時間の経過と共に右下腹部)、発熱(高熱の場合は、穿孔性腹膜炎や膿瘍形成も発症することが多い)、嘔吐・吐き気、下痢などが起きるようになります。また虫垂炎に関しては、進行の程度によって、カタル性虫垂炎、蜂窩織炎性虫垂炎、壊疽性虫垂炎に分類されます。最も軽度なのがカタル性で、これは虫垂の粘膜にのみ炎症がみられる程度です。次の蜂窩織炎性は、虫垂の壁全体に炎症が広がるほか、内腔(虫垂)に膿が溜まっていきます。最も悪い状態が壊疽性で、これは虫垂組織が壊死し、虫垂壁に孔が空くようになります。このような場合、腹膜炎も発症しやすくなります。
検査について
虫垂炎の有無を診断する際によく行われるのが血液検査です。虫垂は炎症を起こすと血液中に含まれる白血球の数が異常に多くなるとされ、さらにその数から炎症の程度もわかるとされているので、かなり有用な検査と言えます。また虫垂の腫大化などを確認するための画像検査として、腹部超音波検査や腹部CT検査も併せて実施していきます。
治療について
検査の結果、カタル性虫垂炎と診断された場合は、抗菌薬による薬物療法となります。これは一般的には「薬で散らす」と言われる治療法です。
また蜂窩織炎性虫垂炎、壊疽性虫垂炎と診断された患者様については、虫垂を切除する手術療法が検討されます。手術をする場合、腹腔鏡手術と開腹手術があります。腹腔鏡手術は腹部に数ヵ所穴を開け、そこからカメラや虫垂を切り取る器具を挿入しての手術となりますが、比較的炎症の程度が軽い場合のみの対応となります。そのため、壊疽性虫垂炎の患者様などについては従来から行われている開腹による手術が行われます。
大腸憩室炎
大腸憩室炎とは
大腸の内壁が外側に向かって袋状に飛び出している状態を大腸憩室と言います。腸内で、この憩室が形成されること自体は何ら問題になることはありません。ただ、憩室内は便が溜まりやすく、細菌を繁殖させやすい特徴があるので、それが増えるなどして感染し、炎症を起こすと大腸憩室炎となります。
ちなみに大腸とは結腸や直腸のことですが、その中でも憩室ができやすいとされる部位が、上行結腸やS状結腸です。つまりこれら部位に炎症が出現しやすいのですが、憩室の数については単発の場合もあれば、複数の数が見つかることもあるなど様々です。
なお大腸憩室炎を発症すると、腹痛(上行結腸での発症なら腹部の右側、S状結腸での発症なら左下腹部)、下痢、便秘などの消化器症状がみられるようになります。軽度の炎症のうちは、周期的な腹痛や下痢、便秘といった程度です。ただ病状がさらに進行すると、腹痛は持続的となる(痛みがひどい)ほか、発熱や嘔気、腹膜炎もみられるようになります。さらに腹腔内に便が漏出すれば、結腸周囲炎や敗血症を併発するようになります。
検査について
患者様にみられる症状や訴えから大腸憩室炎が考えられる場合に行うのが腹部レントゲン検査、腹部超音波検査(腹部エコー)やCT検査です。また出血が確認されている場合は、出血している箇所を調べるための内視鏡検査(大腸カメラ)が必要になることもあります。
治療について
憩室炎の状態が軽度であれば、消化の良い食事を心がける食事療法や抗菌薬の内服による薬物療法で治るようになります。ただ炎症の状態がひどければ、病院に入院しての絶食、抗生物質の点滴をしていきます。また憩室が破れて穿孔がある、腸に狭窄や閉塞がみられる、腹膜炎がひどい状態という場合は手術療法が必要となります。
また大腸憩室炎は再発しやすい病気でもあるので、その予防対策として便秘がしにくい食生活を心がける、適度に運動する、水分を十分にとるなど日頃の生活習慣を見直していくことも大切です。
便秘
便秘とは
便秘とは、排便が困難、あるいはスムーズでない状態のことです。具体的に言いますと、排便の回数が週に3回以下である、硬い便が排出されることで痛みや出血を伴う、残便感がある、便が腸内に溜まっていても便意を感じない(直腸性便秘)といった状態を言います。また便秘は、女性の患者様が多く、人によっては年を経るごとに上記のような症状が現れるようになることもあります。
原因については、いくつかあると言われています。例えば、腸の動きが弱い、日頃の生活習慣(食物繊維の少ない食生活、高脂肪食が多い、運動不足 など)、加齢や何らかの病気による副交感神経の働きの低下などによる慢性の便秘をはじめ、環境の変化によるストレスが影響する一過性の便秘、大腸の蠕動運動が低下したことによる弛緩性便秘、直腸に便が溜まっても便意を感じない直腸性便秘(主に便意を我慢するなどして神経が鈍くなる)もみられます。また、他の病気の一症状として発症する便秘もあります(器質性便秘)。
なお排便に関する症状以外では、お腹が張る、食欲が落ちる、おならが出やすい、腹痛、疲れやすい、口臭・体臭がきついなどがあります。
検査について
多くの場合、患者様を問診していくことで診断をつけます。ただ、器質性便秘の可能性が考えられると医師が判断すれば、腹部レントゲン検査や大腸カメラ(大腸内視鏡)を行っていきます。
治療について
治療をする場合、生活習慣の改善と薬物療法になります。生活習慣の見直しで大切なのが食事で、主に食物繊維の多い食品をとる、こまめな水分補給などをしていきます。また不規則な食事は便秘を招きやすくするので、栄養バランスに注力するだけでなく、規則正しく食事をしていくことも重要です。さらに血行を促進させ、排便に対する筋力もつけられるようになる運動も日常生活に取り入れるようにします。このほか、ストレスをできるだけ溜め込まないことも便秘の予防には大切です。
薬物療法ですが、直腸に溜まった便が出ないという場合は、浣腸や下剤を使用していきます。また硬い便が出る患者様には、便を軟らかく薬(潤滑性下剤)を用いるほか、腸内の蠕動運動を活発にさせる必要がある患者様には、小腸や大腸を直接的に刺激していく刺激性下剤を使用していきます。器質性便秘の患者様には、原疾患の治療も併せて行っていきます。
過敏性腸症候群
過敏性腸症候群とは
患者様が腹痛、下痢、便秘などの症状を訴えるものの、診断をつけるための詳細な検査をしても原因が特定できなければ、過敏性腸症候群が考えられます。つまり消化器官には、炎症や潰瘍などの異常はみられないということになります。
このように病変などがなければ、ストレス、食生活や生活習慣の悪化によって消化器症状が起こると考えられるのですが、もともと腸というのはストレスや不安・緊張といった精神面の影響をもろに受けやすい器官でもあります。この場合の発症メカニズムですが、ストレスや不安・緊張というのは、自律神経を乱すようになるのですが、それはやがて腸の運動異常などを引き起こし、下痢や便秘などの症状となって現れることがあります。これが過敏性腸症候群です。
主な症状ですが、下痢、便秘、下痢と便秘を繰り返すなどのタイプがあるとされ、この3つのどれにも当てはまらない機能異常は分類不能型と診断されます。なお下痢のケースは男性に多く、便秘のケースは女性に多いという特徴もあります。
検査について
過敏性腸症候群は、検査によって何かわかるということはありません。ただ診断をつけるにあたっては、何の病変もないことを確認する必要があるので、大腸カメラ、バリウム造影検査、腹部CTなどの画像検査などをすることがあります。
治療について
患者様が訴えている消化器症状を抑える治療法として、下痢の症状があれば下痢止め、腸を整える必要があれば整腸剤を使用していきます。ただこれらの治療というのは根本的な解決とはなりません。そのため、発症の原因がストレスと考えられる場合は、抗不安薬や抗うつ薬を使用することで、ストレスを緩和させていくこともあります。このほか腸内環境を改善するにあたって、日頃の生活習慣を見直すための食事療法や運動療法も行うようにします。
炎症性腸疾患
炎症性腸疾患とは
小腸や大腸の粘膜に炎症、ただれ、潰瘍などを引き起こす慢性的な疾患を総称して炎症性腸疾患と言います。これは、略称としてIBD(Inflammatory Bowel Disease)と呼ばれることもあります。発症の原因については、免疫機能の異常、腸内細菌のバランスの乱れ、遺伝的要因などが考えられますが、完全に特定しているわけではありません。なお代表的な炎症性腸疾患には、潰瘍性大腸炎やクローン病があります。それぞれの特徴は次の通りです。
潰瘍性大腸炎とは
潰瘍性大腸炎は、大腸の粘膜にのみ炎症が発生する病気です。この場合は直腸から炎症が起き、結腸に向けて便の流れとは逆流する形で炎症所見が広がるようになります。炎症が進行すると次第に腸の粘膜のただれ、潰瘍となるわけですが、一度発症すると症状が良くなったり悪くなったりと慢性的に繰り返すようになります。主な症状は下痢、血便、腹痛(けいれんを伴う)です。
クローン病とは
こちらも原因が特定できない非特異性腸炎です。クローン病は消化管の中であればどの部位(口腔から肛門まで)でも発症する可能性はありますが、その大半は小腸や大腸で縦長の特徴的な潰瘍がみられるようになります。その後は、長期に渡って炎症を慢性的に繰り返すようになります。若い世代(10~20代)の患者様が多いのも特徴です。主な症状は、腹痛、発熱、下痢、血便などで、そのほか体重減少や全身の倦怠感がみられることもあります。
検査について
炎症性腸疾患が疑われる場合に診断をつけるための検査として、炎症の程度を確認するための血液検査、胃や大腸の様子を観察する内視鏡検査(胃カメラ、大腸カメラ)、検便、大腸や小腸にバリウムを注入し、その部位をX線撮影し、これらの粘膜の様子を調べる消化管造影検査を行っていきます。
治療について
現時点で、炎症性腸疾患に対する特効薬はありません。この場合、主に薬物療法となりますが、炎症を抑えるにあたっては抗炎症薬を使用していきます。また発症の原因として、免疫による過剰反応によって腸が炎症を起こすことがあるので、それに対する治療として免疫抑制薬を使用することもあります。また細菌が原因であれば抗菌薬を用います。このほか、腹痛や下痢などの消化器症状が強く出ているのであれば、整腸剤や鎮痛薬などによる対症療法を行います。
急性肝炎
急性肝炎とは
肝炎ウイルス(A、B、C、D、E型 など)に感染、あるいは自己免疫、薬剤などが原因となって、短期的に肝臓が炎症を起こしている状態を急性肝炎と言います。この場合、これといった治療をしなくても治癒することが大半ですが、同疾患を発症した患者様の1~2%程度の方に劇症肝炎がみられるとも言われています。劇症肝炎は、発症後急激に肝機能が低下するというもので、肝炎の症状がみられてから8週間以内に意識障害(肝不全症状)が現れると言われています。ちなみに劇症肝炎の原因で最も多いとされているのが、B型肝炎ウイルスに感染している患者様です。
なお急性肝炎は、発症して間もない時期は、発熱、全身の倦怠感、筋肉痛、食欲不振など、一見すると風邪と間違いやすいのも特徴です。さらに時間が経過すると尿が茶色になる、黄疸(皮膚や白目が黄色っぽくなる)などもみられます。なお黄疸が現れる頃になると倦怠感や発熱などの症状は治まっていくようになりますが、劇症肝炎の場合はこれらが逆に強く出るようになるほか、意識が朦朧、ろれつが回らないなどの症状も起きるようになります。ちなみに劇症肝炎の場合は、早めに気づくことも大切です。
検査について
急性肝炎の診断をつける検査で有用とされているのが血液検査です。なぜなら肝細胞に何らかの異常があると肝臓内の物質は血液中に漏出するようになるからです。主にAST、ALT、ビリルビンの数値を計測し、これらの数値が高いと肝細胞が何らかの障害を受けていると思われます。このほか肝炎ウイルスに感染しているかどうか、肝炎の程度を調べる検査などもしていきます。
治療について
急性肝炎と診断されても、何か特効薬があるとか、手術が必要ということはありません。この場合、患者様は入院しますが、ひたすら安静に努めることで、体を回復させていきます。食欲がなければ点滴をすることで栄養状態を整えていきます。なお同疾患でみられる症状は、数ヵ月ほど経過すると治まっていくことが多いです。
また劇症肝炎の場合は、速やかに治療を行う必要があります。この場合、抗ウイルス療法、短期間でステロイドを大量に使用するステロイドパルス療法、肝臓の働きを補うとされる人工肝臓補助療法などを行うなどして、肝機能が回復するのを待ちます。それでも状況が改善しないという場合は、肝臓移植が必要となることもあります。
B型肝炎
B型肝炎とは
ウイルス性肝炎のひとつで、B型肝炎ウイルス(HBV)に感染し、発症している状態をB型肝炎と言います。同ウイルスに感染した9割程度の患者様は、感染した直後から症状が出るようになりますが、自然と治癒するようになります(急性B型肝炎)。また残りの1割程度の患者様は、慢性化するようになります(慢性B型肝炎)。
感染経路に関してですが、急性B型肝炎ウイルスの患者様では、主に感染者との性行為や感染者からの血液感染(輸血、注射針の使い回し など)が挙げられます。慢性B型肝炎では、感染者である母親から子どもへ感染する母子感染、すでにHBVキャリアの方が発症するというケースがよくみられます。
なおHBVに感染すると人によって異なりますが、1~6カ月程度の潜伏期間を経てから発症するようになります。急性B型肝炎の患者様では、全身に倦怠感、微熱、黄疸(尿が濃くなる)、嘔吐・吐き気、食欲不振などの症状がみられるようになります。また慢性B型肝炎は、自覚症状が出にくいのが特徴なので、病状を進行させやすくなります。放置が続けば肝硬変や肝がんを発症させてしまうこともあります。そのため、定期的に検査を行うなど、早めに発症に気づくことが大切です。
検査について
B型肝炎ウイルス感染の有無を調べる場合、血液検査を行います。これによって抗体の有無や肝炎の発症や炎症の程度について確認することができます。さらに医師が必要と判断した場合は、腹部超音波検査やCT検査、MRI検査などの画像検査によって肝臓の様子をみるなどします。
治療について
急性B型肝炎では、9割近くの患者様が自然に治癒しますが、全体の1%の患者様に劇症肝炎が起きることもあります。その場合は(劇症肝炎に対する)治療が必要となります。一方、慢性B型肝炎の患者様につきましては、抗ウイルス療法として、核酸アナログ製剤やインターフェロンなどを組み合わせた薬物療法を行っていきます。
なお小児の定期予防接種にはB型肝炎ワクチンの接種があります。これはB型肝炎の発症やHBVウイルスによる感染を防ぐためのワクチンです。乳児の間に計3回の接種が推奨されています。また推奨期間外であっても任意接種(全額自己負担)とはなりますが、接種自体は可能です。
C型肝炎
C型肝炎とは
C型肝炎ウイルス(HCV)に感染し、発症したウイルス性肝炎をC型肝炎と言います。ちなみに日本で慢性肝炎を発症している患者様の約70%が同ウイルスに感染したことによるものですが、さらに肝硬変や肝がんを引き起こす原因の約80%がHCVであるとも言われています。
感染経路につきましては、感染者の血液を介して感染するとされ、臓器移植、輸血、入れ墨、注射針の使い回しなどが挙げられます。なお、性行為や母子感染、唾液などによる感染のリスクは低いです。
主な症状ですが、HCVは感染後、2週間~6ヵ月程度の潜伏期間を経るとされ、感染初期は自覚症状が出にくいとされています。ただ症状がみられる場合は、全身の倦怠感、発熱、食欲低下などがみられます。なお同疾患による患者様の約3割の方は、体内からウイルスが排除されるなどして自然と回復するようになりますが、残りの7割ほどの方は慢性化するようになります。その後、発症に気づかないまま病状を進行させるとやがて肝硬変を併発していきます。さらに同疾患が進行すると、全身倦怠感、食欲不振、足がむくむ、尿の色が濃いといった症状や黄疸が現れるようになります。
検査について
診断をつける検査として最も有用なのが血液検査です。同検査によって、抗体の有無や炎症の程度、肝機能の状態を確認していきます。また、医師が必要と判断した場合に腹部超音波検査(腹部エコー)をはじめ、CT検査、MRI検査などの画像検査も行い、肝臓の炎症の有無などを調べます。
治療について
治療の目的は、HCVを体内から排出していくことです。以前は、主にインターフェロンによる薬物療法(ペグインターフェロン、リバビリン、シメプレビルなどの薬剤)を併用して治療を行っておりましたが、治療効果は50%程度でその他にウイルスの薬剤耐性の問題や治療の副作用の問題(発熱、倦怠感、関節痛、食欲不振などの症状)など課題がたくさんありました。最近では、経口内服薬の直接作用型抗ウイルス薬の併用により、90%以上の治療効果が期待でき、副作用も少ないことから高齢者の方でも、治療が行えるようになりました。
総胆管結石
総胆管結石とは
総胆管とは、肝臓でつくられた胆汁が通る管である総肝管と胆汁を溜める胆のうに分岐した胆のう管が合流している部分を言います。この場所に結石が溜まっている状態を総胆管結石と言います。結石は胆汁に含まれるコレステロール、あるいはビリルビンが結晶化したことで発生したものです。胆汁が十二指腸へと流れる通路でもある総胆管に結石がみられると細菌もそこに留まるようになります。この状態を放置すれば、重篤な感染症として知られる敗血症やDIC(播種性〈はしゅせい〉血管内凝固症候群)などの発症にもつながりかねないとされていて、注意が必要な疾患でもあります。
主な症状ですが、この場合、結石が胆管に入り込んで痛みがみられることがあります。このほか食後30分~2時間ほど経過した際に、嘔吐・吐き気、右上腹部に痛みが現れることもあります。また結石によって胆管が塞がれ、感染を起こすようになると急性胆管炎を発症することもあります。同疾患によって、発熱、ゾクゾクするような寒気、黄疸などの症状がみられます。これらに心当たりがあるという方は、総胆管結石の可能性もありますので、一度ご受診ください。
検査について
総胆管結石が疑われると診断をつけるための検査として、腹部超音波検査(腹部エコー)、腹部CT検査、腹部MRI検査、超音波内視鏡検査(EUS)などの画像検査を行っていきます。なおEUSは胃カメラ(上部消化管内視鏡)を用いた超音波検査で、胆のう、総胆管、膵臓の内部の様子を観察するので、より高い精度で病変などを確認できるようになります。
治療について
治療は主に外科的治療と内科的治療に分けられますが、根本的に治癒したいという場合は、外科的治療の方が、その可能性が高いです。なお外科的治療には、内視鏡的胆管結石除去術、経皮経肝的胆管結石除去術、外科的手術などの方法があります。
内視鏡的胆管結石除去術は、同疾患の患者様に最もよく行われている治療法で、まず胆管の出口を拡張し、結石を取りやすい状態にした後に内視鏡処置具を使用して、結石を取り除いていきます。また経皮経肝的胆管結石除去術は、主に胃の手術を終えて間もない方や十二指腸に胃カメラを挿入できない方向けとなります。まず肝臓内の胆管(肝内胆管)の場所を超音波で確認し、そこに向け針を刺してチューブを留置し、結石を取り除くという内容になります。外科的手術に関しては、上記の手術と比べると患者様への負担をかけますが、その際は胆のう摘出手術と同時に行うことで、体に対する負担減や入院期間の短縮にできるだけ努めていきます。
一方、内科的治療としては、胆石溶解療法、体外衝撃波などがあります。胆石溶解療法は、胆石溶解剤を服用していくことで胆石を溶かしていくというものですが、効果のある患者様もいますが、効き目がみられないというケースも少なくありません。また、再発率も高いとも言われています。体外衝撃波は、結石があるとされる部位に向け体外より衝撃波を当て、結石を破砕する治療法です。先に挙げた治療法が困難とされる患者様に検討されます。
胆管腫瘍(胆管がん)
胆管腫瘍とは
胆汁の通り道(管)を総称して胆道と言います。胆道の範囲は、肝外胆管(肝臓~十二指腸までの胆汁が通る管の範囲)、胆のう、十二指腸乳頭部に及び、これらの上皮に発生する腫瘍が胆道がんとなるわけですが、発生した部位によって、胆管がん、胆のうがん、十二指腸乳頭部がんと診断されます。さらに胆管がんは胆管内のどの部位に腫瘍が発生しているかで、肝内胆管がん、肝門部領域胆管がん、遠位胆管がんに分類されます。なお胆管がんは、膵臓がんと同様に治療が困難とされるがんで、転移がしやすいという特徴もあります。
発症原因は現時点で特定できていません。50歳を過ぎた頃から罹患率が増加していきます。初期症状は出にくいとされていますが、病状が進行すると黄疸(白目や皮膚が黄色っぽくなる)、白色便、茶褐色の尿などがみられるようになります。そのほかにも腹痛、かゆみ、体重減少などの症状がみられるようになります。なお胆管がんになると血液中のビリルビン濃度が高くなるので、尿検査でビリルビンの数値が上昇するようになります。
検査について
胆管腫瘍(胆管がん)の診断をつけるために行われる検査には、血液検査、腹部超音波検査、CT検査、MRI検査、超音波内視鏡検査を行っていきます。血液検査では、血液中に含まれるビリルビンの数値などを確認するほか、腫瘍マーカーも調べていきます。胆管がんには特異的なマーカーはありませんが、CEAやC19-9などは診断をつけるのに補助的役割をするとされています。腹部エコーやCT、MRIや超音波内視鏡検査などの画像検査では、胆管の拡張の程度や腫瘍の位置および範囲などをみていきます。
治療について
胆管がんは、発生部位に関係なく、手術療法による切除が望ましいとされています。ただその方法というのは、先にも挙げた胆管がん3つのタイプ(肝門部領域胆管がん、肝内胆管がん、遠位胆管がん)でそれぞれ異なります。
肝門部領域胆管がんは、肝臓の血管の出入り口とされる肝門部周辺に発生したがんのことです。この場合は肝臓や胆のう、リンパ節を切除するほか、膵臓も合併切除が必要になることもあります。
肝内胆管がんは、肝内胆管に発生するがんです。そもそも肝内胆管とは、肝臓から十二指腸まで胆汁を運ぶ管のうち、肝臓内に位置する胆管で、この部位に発生するがんになります。発生部位が端の方であれば部分切除で済みますが、病状が進行した場合は、胆のう切除のほか、周囲のリンパ節郭清が必要になることもあります。
遠位胆管がんは、十二指腸の近い部分の肝外胆管に発生するがんです。この場合、膵臓にもがんが広がりやすくなるので、十二指腸あるいは十二指腸に接している部分の膵臓を切除する手術を行っていきます(膵頭十二指腸切除)。
膵腫瘍(膵がん)
膵腫瘍とは
膵腫瘍は、膵臓にできるがんを総称した呼び名になります。その中で最も発症しやすいとされているのが浸潤性膵管がん(膵がん)で、膵腫瘍を罹患している患者様の8割程度を占めると言われています。このほか、膵臓に発生する腫瘍としては、膵管内乳頭粘液腫瘍(IPMN:Intraductal Papillary Mucinous Neoplasm)や膵内分泌腫瘍もあります。腫瘍のタイプによっては、速やかに手術を要するケースもあれば、経過観察をしながら様子を見て、大きくなったら切除するという場合もあります。発症の原因については、現時点で特定されていませんが、家族歴、喫煙、肥満、糖尿病、慢性膵炎などが関係していると言われています。
主な症状ですが、発症して間もない頃は症状が出にくいとも言われますが、腹痛や背中の痛みがみられることもあります。ただそれらの症状は軽く、一時的に過ぎないので自覚しにくいです。ただその後、2~3ヵ月経過した後に再び同様の症状がみられるようになります。その際に詳細な検査をして、膵臓がんに気づくこともあります。また、黄疸や体重減少などの全身症状がみられるのであれば、病状がかなり進行していることが考えられます。
そのため全身症状がみられる前に治療をしていきたいのですが、背中の痛みや腹痛はよほどの激痛でない限りは多くの人は重症とは考えず、また背部痛であれば整形外科の対応疾患と思うこともあるかと思います。ただ背中に長いこと鈍痛を感じているのであれば、内科や消化器内科も一度ご受診されることもお勧めします。
検査について
膵腫瘍が疑われる、あるいは膵臓を調べるという場合に行われるのが、腹部超音波検査(腹部エコー)やCT検査で、膵臓や周囲の臓器(肝臓、腎臓、胆のう など)に病変の有無を確認していきます。それでも診断をつけるのが困難であれば、MRI、超音波内視鏡検査、ERCP(内視鏡的逆行性胆道膵管造影)なども行っていきます。
治療について
検査の結果、膵臓がんと診断されたら直ちに治療が必要となります。その場合、がん細胞をすべて取りきる手術療法が第一選択肢となります。なおその方法については、がんが発生している部位によって異なります。具体的には、膵臓の右側である膵頭部にがん細胞が発生していれば、膵頭十二指腸切除術が行われます。一方、膵臓の左側(膵体尾部)にがんがある場合は、膵体尾部切除となります。